目が乾いている感覚
2021年8月6日
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真夏に帽子もなく、重いリュックを背負ったまま5時間写真を撮り歩いた。地図を見た時はそれほどではないと思った距離も、Googleが示した所要時間も、天候や足を留める回数やで狂っていった。それはほとんど5倍の時間で、太陽は体から水分を奪っていく。肌を照らして、皮膚が変化していくことを感じる。

水分、塩分。身体から減っていくものを思う。太陽が強くて、頭が少しボーッとする。歩けども誰もいないし自動販売機もない。肌着とTシャツ。Tシャツが煩わしくなってきて脱ぐ。少し軽くなった身体で進む。気になったものがあれば写真を撮るけれど、いつもよりも遠いところから見ている感覚。近くまでの体力。登っていく体力。温存する体力。引いた目線について考えたのは自宅への帰り道で。

この時の遠い目線は2泊3日の短い旅の中に充満していたと思う。日焼けは思ったよりも強く、肌がヒリヒリして集中力が減っていた。目が乾いている感覚も続き、目のピントが少しだけずれたままになった。

Tシャツを脱いでから、ボーッと歩いていると畑のそばの小川に撮りたいものがいくつか。カメラを構えた瞬間、脱いだTシャツが川に落ちた。しゃがんでも取れない距離で、三脚を伸ばしてなんとか拾い上げた。水浸しになったそれを乾かすのも三脚の上だ。太陽は強いものの、乾くにはまだまだ時間がかかりそうだった。またGoogleマップを見てみると、もう少しでスーパーやコンビニがあるエリア。肌着で行くか、Tシャツを乾かすか、濡れたTシャツを着るか、と、濡れたTシャツを思い切って着て進む。濡れたTシャツは太陽光の暑さを少し和らげてくれた。

そこから1kmほど進んだ場所にあったスーパーでスポーツドリンクと栄養ゼリー、おにぎりと唐揚げを買ってお店の前の木陰にあったベンチで食べる。すぐに無くなる。目前のアスファルトを温めている太陽の光をじっと見る。旅先について3時間ほどの時だった。

休みをとって旅に出る。快適な旅となるのは稀で、今回は特別酷かった気もする。それから二日後である今日帰ってきたけれど、肌は今も痛いし、目も心なしかヒリヒリしている。太陽は強い。それを思い知った。目のピントがずれたまま撮った写真をこれから見る。