闇と水分。そのどちらもが場所に浸透していた。偶然雨がよく降る数日に遭遇し、昼夜問わずに写真を撮った。
日が暮れるとともに覆い被さるように広がる深い闇はただの暗さではなく、少し道を逸れると背筋が寒くなるような、黒々とした闇だった。近県の川を氾濫させるほどの水量を記録した雨は、道を濡らし、川の姿を変え、川岸に様々な物を運ぶ雨となった。写真を撮るには難しい状況ながら、昼夜問わず歩きながら写真を撮る体験は、その場所の空気を感じるだけではなく、天候や気候、目に見えないものまでが身体に沁み込むような体験だった。
浸透する自然。それは、ただ山や川が在れば生まれる物ではない。
写真とは世の中への理解を個人的に深める行為でもある。雨をここまで感じたのは初めてのことで、これがきっかけで太陽や海、火や雷にも興味が向かっていけばと思っている。自然とはずっと近くに在る物ながら、当たり前すぎて薄まってもいるのだ。
意識をしていなかった当たり前の自然への興味。それは、自然が自然として濃く近い位置にあってこそ生まれるのだ。