9月21日に最終審査会が行われ、グラント(助成金の受賞者)が決まりました。
https://thebackyard.jp/2020-pitch-grant-grantees
自分自身は選ばれず、残念な気持ちもありますが、発表を終えて自分ではないということが実感としてありました。
まず、一番目に発表をした横山さんの作品が素晴らしかったこと(「この人がとって欲しいと応援したくなる内容でした」)。そしてなにより、満足のいくプレゼンテーションができなかったことがあります。自分の中で「最終審査の中での凄みのある誰か」を期待していたことがあります。
そして上記を踏まえて、私自身が来年のPITCH GRANTに期待することであり、今年の感想を書きます。
PITCH GRANTはプレゼンテーションに重きを置いたグラントですが、(全体の感想として自分が書くのもおかしいですが)プレゼンテーションに際立った「良さ」「凄み」「引き込まれる」を感じた人がいなかったです。それは作品の良し悪しは別として、あくまでもプレゼンテーションに関してです。
その要因としては、PITCH GRANTは35歳以下の若手作家を対象としたもので、絶対的な経験値がなかったこともあると思います。そして、岡原さんが開催した目的の一つとして、そういった若い作家に対して「自身の作品について理路整然と聴衆に伝える経験を積ませる。そういった機会を作る」というものであったと思います。
そんな中、自分自身のプレゼンテーションの振り返りをすると、ほとんど全てをメモに頼るような言葉の羅列となりました。メモ特有の間違いも一箇所あり、練習した期間がなんであったのかと、深く反省をしています。自分の次に発表された豊田さんの作品については、打ち込まれているプロジェクトや問題に対して、とても丁寧にお話をされていたことが印象に残っていながら、自分自身のプレゼンテーションの反省時間となり、集中して聞くことができていません。
自身のことを混えましたが、1名を除いて自分を合わせた8名はメモを手に持ち、「その場での言葉」のようなものは感じることができなかったこと。それは私自身の期待とは違うものでした。考えを正確に伝えることは大切ですが、言葉に起伏がなければ、それは生で行う必要もない気がします。(岡原さんが海外で経験されたプレゼンテーションの場でのメモの使い方なども気になるところ)これは自分への戒めでもあります。
作品に対して悔やむ部分はないですが、発表に関しては史上最大といっていいほどの赤点でした。会場にこられていた審査員でもある一般聴衆にとって、全体を通してのこのプレゼンテーションは満足いくものだったのかと、心配な気持ちにもなりました。実際のところはどうだったのでしょうか。
※PITCH GRANTの感想を書いていただいたブログのURLも掲載します「タシロユウキ/写遊百珍」
私自身は今回発表した作品『穴を掘る』を今後も撮り続けながら、今以上の束を作ること(それが本へと繋がること)を続けたいと思っています。また、今日は帰り道に知り合いの作家からPITCH GRANTのホームページに掲載されたプロポーザルと作品に対する感想を頂き、作品への考えについて短いやり取りをしました。今後もしも今回のような機会があれば、最終審査で行き着くことができなかった理路整然とした考えと共に、正しく伝えるに終始し過ぎない生の言葉を話せるようにと、今後に向けて思うばかりです。
長くなりますが、PITCH GRANTについてももう少し書きます。これは今後の自分に対する態度にも繋がると思っています。
PITCH GRANTに関しては岡原功祐さんという一人の写真家が、ほぼ全ての運営をこなしながら開催されたグラントです。
ですが、応募者向けのグラントの内容を説明するzoomウェビナーに始まり、最終審査会が行われるまでの日程で行われた審査員によるzoomウェビナーについても大変な内容でした。自分は仕事帰りなども含めて、それを観ながら帰ることが日課となり、全ての回を拝聴したことはこのグラントへの信頼でもあります。
そして社会に対しての姿勢(審査員の男女比)など、写真という枠組みに捉われない、メッセージが含まれています。何かを企画(展示・コンペ・芸術祭など)することは、個人・団体に関わらず明確な考えを求められている。そういったPITCH GRANT全体の姿勢があったからこそ、グラントに選ばれた豊田さんも参加したと仰っています。その後も岡原さんはメッセージを発信し続けています。
ここ数年は社会に対して気持ちが滅入ることも多いですが、その現状に対して自分がどう態度を示して、どう動いていくかは想像の世界ではなく現実として求められていることです。
選ぶ本も昨年ごろから変化があり、どうするか、どう間違えないかということを念頭において選ぶこともあります。私が選ぶ本を示すことも、一つの運動ではないかと思いながら、本についても話していきたいと思う今日この頃。その考えを後押しする機会でした。
最終審査会が終わってからもPITCH GRANTは続いています。
来年の開催が決まり、助成金の支援を求めています。すでに今年と同額は集まったようですが、私自身ももっと支援ができる企画へと育って欲しいと思っています。
そして、グラントの獲得者だけではなく、ファイナリスト全員のプロポーザルと応募作品が閲覧できるようになりました。今後もファイナリストが参加する企画が始まるかもしれません。それについての打ち合わせが既に決まっています。現実に対するこの動きの速さもまた、作家としての自分たちにとって求められている部分ではないかと思います。
長くなりましたが、PITCH GRANTの感想や反省とともに、今後についてでした。いつでも現実に対して動く作家でいたいと思いながら、自身のプレゼンテーションで言った、自作に対する言葉を書いて終わります。
「この途方もない作業を私はやめません。これからもこの地道な行為を続ける。それが、私の『穴を掘る』に対する態度であり、これからです。」
貴重な機会をありがとうございました。