旧八幡郵便局。ヴォーリズ建築。聞いたことはあっても意識したことはない。今回はその場所でコンサートを見たけど、ヴォーリズ建築最高やな。というものではなかった。と、いうことはわざわざいう必要もない。とはいえ開演前、早くに着いて、近江八幡は観光地であるようだけど、根から観光巡りに心惹かれたことのない自分はちょっと路地裏をふらふらして見つけたものを少し写真に撮るくらいしかやることはなかった。そして持て余した時間を会場となる建物の裏にあるベンチに座って本を読んだりボーッとして過ごした。あのベンチ周りのヴォーリズ建築のことはよく覚えている。
さて、テニスコーツの話です。
テニスコーツを聴き始めたのは「Music Exists」のシリーズが出始めたこと。さらに縮まったのはkazuki hashimotoさんの企画でテニスコーツが共演していたこと。旅先の北海道で札幌国際芸術祭があり、テニスコーツがずっと活動していたことがある。全て今年に凝縮されている。
芸術祭が終わってすぐ、テニスコーツが琵琶湖の近所の昔郵便局だった所でベストなセットリストで演奏。と気づいてすぐに行くのを決めて、チケット取って、開催日の少し前にチケットは売り切れていた。
テニスコーツの音楽って良いですね。コンサートもほんとによくて。どんな空気もよくなって、さやさんと植野さんが掛け合って、この日も2時間半か3時間か、なんやええ時間やな。って思っていたら、あっという間に終わってしまっていた。
終わってしまっていたんですけど、その日から結構な日が経ってブログを書いてるのも、コンサートが終わったもののずっと引きずってるくらいにその日のコンサートが良かったんです。僕がテニスコーツを聴き始めたのは最近だし、今まで見たテニスコーツは前述が全て。こんなに長くたっぷりとテニスコーツを見たのは今回が初めてだった。知らない曲が半分以上。まともに聞いた事があるのは『Music Exists』のシリーズのみ。あとはYouTubeでアップされている曲を疎らに聞き流していた。
ベストならではなのか、耳に残る曲がいくつもあって、演奏しつつ曲の解説もしてくれるから、聞くだけではないために印象に残っていく。日本語の曲が大半である中、時々歌われる英語曲がまた耳に残っていく。Bill Wellsって知らないな。The Pastelsも一枚聞いたことあったかな、というくらい(どちらのアーティストとも共作盤やカバーアルバムが出ている)。そうやって、初耳な曲がすんなりと耳に馴染んで覚えるし、一曲ごとのお二人のやりとりがまた記憶に残っていく。
そんな自分の拙い記憶力で覚えていた曲。
Song for a Friend
The Summer
Two Sunsets
マイカー炎上
マリーン
Rasen
ドーナツ
タマシー
音楽や映画に記憶力が少ない自分がこれだけ覚えているのは、よほど今回のコンサートが特別だったのか、普段とは違ったのだと思う。何というか、隔たりのなさ。普段よりも近い距離感と音楽が、演奏側と観客、という構図でもなく、やる曲、やる話、やりとり、音楽だけでなく楽しんでいたのだと思う(やる話という言葉はない)。ステージがなく、客と同じフラットな床でのコンサートと言うのも良かったんやろな。ありがとうヴォーリズ建築。
その後、あまりにも聞きたい曲が多くて、レコード屋を回って、amazonでと、いくつかのCDを買った。CDを聞いていて、あの日やっていた曲が流れると、やっぱりあの日のことを思い出す。テニスコーツの二人にとって演奏をしたり歌を歌っていることが、ごく自然のことに見えることもまた、お二人の魅力であると感じた。音楽家として当たり前のことのようで、なかなか見る事がないなと思う。
テニスコーツのコンサートは機会があるたび見たいと思っている。コンサート、コンサート、と言っているのは旧近江八幡郵便局の一回にある「よろず屋」のおばちゃんが近所の人に「今日何かあるの?」と質問される度に、「今日は二階でコンサート♪」と答えていたからです。